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// 位相補正

キックとベースの位相ズレを直す6ステップ

どのDAWでも使える6ステップの手順です。逆相ボタンから拍ごとに違う角度まで、各ステップで何を聴けばいいかを解説します。

執筆 Wagner Who 更新 2026年10月28日(水) 約10分で読めます

短い答え

キックとベースの位相ズレを直すには、2つをソロにしてモノラルにし、150Hzでローパスをかけ、ベースを逆相にして聴き比べたうえで、位相ローテーターをいちばん太く聴こえる角度まで回します。最適な角度はベースの音程で変わるので全部の拍を確認し、サイドチェインの後とモノラルでももう一度確認します。

要点

  • 逆相は2択です。最適な角度はたいていその間にあります。
  • ベースの音程が変わると角度も変わります。全部の拍を確認してください。
  • 回すのは位相だけ。ベースのタイミングは動かさないので、グルーヴはそのままです。

// やり方

ステップ2〜5をワンクリックで

このガイドのステップ2から5を、選んだ小節でプラグインが一度に行います。

  1. ステップ 01

    キックにKICK、ベースにBASS

    トラックごとに1つずつ挿します。BASS側が両方を聴いて、キックごとの回転を見つけます。

  2. ステップ 02

    小節を選んでAUTO MIXを押す

    1、2、4小節をループさせてAUTO MIXを押します。タイミングを動かさずに、拍ごとに角度が決まります。

  3. ステップ 03

    同じ拍で聴き比べる

    A/Bを切り替えると、キックのトラックは同じ拍で切り替わります。そのまま使うか、AMOUNTを下げるか、Xで取り消します。

Kick & Bass Auto Mixは各拍の角度を見つけ、グルーヴを動かさずに補正します。

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目次
  1. キックとベースの位相ズレの見分け方
  2. キックとベースの位相ズレを直す6ステップ
  3. キックとベースの位相を直すときによくある失敗
  4. 逆相、位相回転、タイミング移動の違い
  5. キックとベースの位相をワンクリックで直す:ステップ2〜5

キックだけなら力強く鳴っています。ベースだけでも大きく聴こえます。ところが2つを一緒に鳴らすと低域がスカスカになり、キックの重さが消え、サブが数dB下がったように感じられます。モノラルのクラブ環境では、さらに悪化します。クリップもしていませんし、メーターにもおかしなところはありません。これがキックとベースの位相ズレです。

このガイドは、どのDAWでも使える6つのステップの手順です。いちばん簡単な確認から、多くのプロデューサーが飛ばしてしまう確認まで、順番に進めます。各ステップで、何を聴いて何を変えるかを説明します。最後に、どのステップを自動化できて、どこが自分で判断する部分なのかも紹介します。

キックとベースの位相ズレの見分け方

キックとベースは同じオクターブを共有しています。多くのキックの余韻は45〜65Hzあたりに落ち着き、そこはちょうどベースがいる帯域です。2つの波が同じ瞬間に逆方向へ動くと打ち消し合い、同じ方向へ動くと足し合わされます。聴こえるのは原因ではなく、その結果です。

  • 2つ同時に鳴らすと、どちらか単体より低域が痩せる。
  • フェーダーは動かしていないのに、ミックスの中ではソロよりキックが弱く聴こえる。
  • ある拍は鳴るのに、別の拍では消える。まるでキックが拍ごとに変わったように聴こえます。たいていは、その下でベースの音程が変わっているのが原因です。
  • モノラルにすると悪化する。スマートフォンのスピーカー、クラブのシステム、多くのサブウーファーは低域をモノラルで鳴らすため、ステレオでは隠れていた打ち消し合いがそこで表に出ます。

どれか1つでも当てはまるなら、次の6つのステップで原因を突き止められます。

// 試してみる

位相を回してサブを見る

赤がキック、緑がベース、シアンがスピーカーから実際に出る音です。ベースの位相を回すと、低域が大きくなったり消えたりします。

低域のエネルギー 0 dB

簡略化したモデル:同じ音程で伸ばしたベースの上に、キックを1発鳴らしています。

キックとベースの位相ズレを直す6ステップ

ステップ1:キックとベースだけをソロにし、モノラルにして150Hzでローパス

DAWでソロにしたキックとベースのトラック。キックは赤、ベースは緑、ハイテク・ミニマルのループ2小節
ステップ1:キックとベースだけを、ドロップでいちばん動きのある小節でループ。

キックとベース以外をすべてミュートします。マスター(または2つのトラックをまとめたグループ)にユーティリティ系かモノラル化のプラグインを挿してモノラルで聴き、150Hzのローパスフィルターを加えます。これで、2つがぶつかる帯域だけが聴こえます。音量は控えめにして、ドロップの中でキックの下でベースがいちばん動いている1〜2小節をループさせます。

このステップで、耳をだます要素がすべて消えます。ハイハット、パッド、リバーブ、ベースのステレオの広がりです。ここで低域が太く聴こえるなら、問題は別のところにあります。スカスカに聴こえるなら、次へ進みます。

ステップ2:ベースを逆相にして聴き比べ

同じ拍の処理前と処理後。キックは赤、ベースは処理前が白で処理後が緑、それぞれの下に数値
ステップ2:反転するたびに同じ拍で比べます。上が処理前、下が処理後です。

ベースの位相反転(逆相)ボタンを使います。Ableton LiveならUtility、Logic ProならGainプラグイン、ほかの多くのDAWならミキサーのチャンネルにある位相反転ボタンです。反転して、元に戻して、毎回同じ拍を聴いてください。低域がより太く、キックがより強く鳴るほうを選びます。

逆相はいちばん手早い直し方で、それだけで解決することもあります。ただし、選べるのは0°と180°の2つだけです。ループにとって最適な角度が70°や120°なら、どちらのポジションも、それぞれ違う形でずれています。そのためにあるのがステップ3です。

ステップ3:ベースに位相ローテーターをかけてスイープ

Kick & Bass Auto MixのPHASEつまみと、ベースの位相回転を示すツールチップ。値はマイナス8.2度
ステップ3:位相ローテーターは、タイミングを動かさずにベースを好きな角度だけ回転させます。

位相ローテーター(オールパスフィルター)は、ベースのタイミングを動かさずに、位相を好きな角度だけ回転させます。ソロ、モノラル、ローパスの状態のまま、ベースに1つ挿して、0°から360°までゆっくり回してください。回すにつれて低域が太くなったり痩せたりします。いちばん太く、それでもキックが抜けてくるところで止めます。

このステップには2つのルールがあります。再生を止めたままではなく、ループを流しながら回すこと。そして、動かすのはベースだけにすること。キックを回転させるとアタックが変わってしまい、そこはたいてい残したい部分だからです。

ステップ4:1拍だけでなく、すべての拍で位相を確認

ハイテク・ミニマルのループの8拍。それぞれの位相角は73、3、131、131、マイナス1、マイナス126、マイナス8、マイナス126度
ステップ4:動くベースラインでは、最適な角度が拍ごとに変わります。

多くの位相補正がうまくいかないのは、ここです。ステップ3で見つけた角度が正しいのは、ある1拍についてだけです。次のキックの下でベースが別の音程を弾くと、2つの波の重なり方が変わるため、最適な角度も変わります。ローリングベースやメロディックなベースラインでは、ほぼ拍ごとに違う角度が必要になることもあります。

125BPMのハイテク・ミニマルのループでは、8拍それぞれの最適な回転が73°、3°、131°、131°、−1°、−126°、−8°、−126°でした。1つの固定設定では2拍にしか合わず、ほかの拍とぶつかります。一方、ベースがキックの下で毎回同じパターンを繰り返す142BPMのサイケトランスのループでは、4拍すべてが同じ121°でした。1拍ずつ聴いてください。拍によって答えが違うなら、妥協の角度(崩れる拍がいちばん少ない角度)を選ぶか、オートメーションやそれができるツールで拍ごとに角度を変える必要があります。

ステップ5:サイドチェインをかけた後に、キックとベースの位相をもう一度確認

サイドチェイン後の数値。キック直後のギャップはマイナス10.4dB、リリースは1/16拍、ダッキングは99パーセント
ステップ5:サイドチェインの後は、キック直後の空きと、ベースが戻る瞬間の位相を確認します。

サイドチェインをかけると状況が変わります。キックの下でベースが下がると、重なりの一部が消えるので、ステップ3で聴こえた打ち消し合いが小さくなったり、ベースが戻ってくる瞬間に移ったりします。サイドチェインをオンにして、ステップ2〜4をもう一度行います。

特に大事な設定は2つです。下げるのはベースの低い部分(およそ130Hz以下)だけにして、その上のグルーヴは聴こえるままにすること。そしてリリースをテンポに同期させ(1/16〜1/4拍)、ベースがキックの余韻に重なる前、次の音の前に戻るようにすることです。そのうえで、ベースが戻る瞬間の位相を確認します。

ステップ6:大きめの音量で、低域をモノラル確認

イラスト:位相がずれたステレオベースの左右と、モノラルにしたときの小さくなった合計
ステップ6:ステレオのベースは、キックが来る前にモノラルで自分自身を打ち消すことがあります。

最後の確認は、ミックス全体をモノラルで、クラブに近い音量で聴くことです。多くのベースはサブより上がステレオで、中にはサブの帯域までステレオのものもあります。モノラルにすると、キックが来る前に、ステレオベースの左右同士が打ち消し合うことがあります。ベースはおよそ120Hz以下をモノラルにして、これまでと同じポイントを聴いてください。キックの重さ、サブのレベル、そしてすべての拍がしっかり鳴っているかです。

できればきちんとしたモニターやサブウーファーで、安全な音量で短時間だけ聴きます。ステップ1〜5はヘッドホンでも構いませんが、このステップでは隠れてしまう部分が多すぎます。

キックとベースの位相を直すときによくある失敗

  • ベースのタイミングをずらす。数ミリ秒ずらせば1拍は揃うかもしれませんが、グルーヴもすべての音も動いてしまいます。位相回転なら、タイミングに触れずに位相だけを変えられます。
  • 曲全体を1回の逆相で済ませる。うまくいっても、合うのは1つの音程だけです。
  • ソロだけで判断する。ソロで直して、ミックス全体で確認してください。ほかのトラックで聴こえ方が変わります。
  • 1拍しか確認しない。ループした1拍は、ベースライン全体ではありません(ステップ4)。
  • EQも位相を動かすことを忘れる。ベースにハイパス(ローカット)や強めのローシェルフをかけると、カットオフ付近で位相が回転します。150Hz以下のEQを変えたら、もう一度確認してください。
  • マスターのリミッターの後で位相を直す。バスの処理より前、キックとベースのトラックで直します。

キックとベースの位相を拍ごとに補正

Kick & Bass Auto Mixは、タイミングを動かさずにキックごとの回転を見つけます。最後に決めるのは自分の耳です。

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逆相、位相回転、タイミング移動の違い

ツール 変わるもの 使いどころ
逆相(位相反転) 0°か180°、トラック全体 手早い確認(ステップ2)。180°が最適なときだけ、それで解決
位相回転 好きな角度、タイミングは不変 メインの直し方(ステップ3)。ベースの音程が変わるなら拍ごとに(ステップ4)
タイミング移動 ベース全体を時間方向に動かす めったに使わない。本当にタイミングがずれているときだけで、位相補正には使わない

// 聴いてみる

位相補正だけを聴く

再生して処理前と処理後を切り替えてください。変わるのはベースの位相だけで、音量は揃えてあります。聴こえる違いは、打ち消し合いが消えた分です。

処理前処理後

キックとベースの位相をワンクリックで直す:ステップ2〜5

ステップ2〜5は測定できるので、プラグインに任せることができます。Kick & Bass Auto Mixは、選んだ小節を聴いて、タイミングを一切動かさずにキックごとの回転を見つけ(ステップ4)、130Hz以下だけにテンポ同期のリリースでサイドチェインをかけ(ステップ5)、120Hz以下のベースをモノラルにします(ステップ6)。安全ルールにより、元のトラックより1.5dB以上多く打ち消し合う拍が出ることはありません。

音量も設定します。キックはベースより約3dB上、2つの合計は−11dBFS前後です。実際のビフォー・アフターの数値を使った全体の手順はキックとベースを自動でミックスする方法で、拍ごとの位相についてはキックとベースの位相をワンクリックで揃えるで詳しく解説しています。

ステップ1と、ステップ6の最後の試聴は、自分で行う部分です。ツールは低域を測れますが、それが曲に合っているかを決めるのは自分の耳です。

// 動画で見る

実際のループで位相を補正

同じ補正を実際に見せています。各拍の角度とその結果を、サイケ、テクノ、3連符のベースラインで確認できます。

キックとベースをワンクリックでミックス(位相・音量・サイドチェイン)|Kick & Bass Auto Mix VST3/AU

// 手動 vs ワンクリック

手作業 vs ワンクリック

 手動ワンクリック
逆相の確認反転して聴いて、元に戻す回転の探索に含まれる(0°〜360°)
位相回転耳で回して、ループに1つの角度測定して拍ごとに1つの角度
タイミングベースをずらしてしまうリスクずれは0ms、グルーヴはそのまま
サイドチェイン設定してから位相を再確認130Hz以下、テンポ同期のリリース、まとめて確認
モノラルユーティリティ系プラグインで再確認120Hz以下のベースをモノラルに
1ループあたりの時間30分から一晩まで数秒。そのあとは自分の耳で判断

// ショート動画

短いクリップで処理前と処理後

実際のループで、ワンクリックの補正を短いクリップで見られます。

// よくある質問

よくある質問

位相ズレは耳で分かりますか?

分かります。2つ同時に鳴らすと単体より低域が痩せる、ミックスの中ではソロよりキックが弱い、ある拍は鳴るのに別の拍は消える、といった形で現れます。たいていモノラルで悪化します。2つをソロにしてモノラルにし、150Hzでローパスをかけるとはっきり聴こえます。

逆相と位相は同じものですか?

違います。逆相は波を上下にひっくり返すもので、180°の回転と同じです。その間の角度はありません。位相回転はベースを好きな角度だけ回せるので、逆相ボタンでは届かない70°や120°も見つけられます。

サイドチェインをかけると位相は変わりますか?

変わります。先に角度を見つけてからサイドチェインをオンにし、もう一度確認してください。ダッキングで重なりの一部が消え、ベースが戻る瞬間に次のキックと出会うからです。

なぜモノラルにすると位相の問題が悪化するのですか?

ステレオでは、左右で打ち消し合いの一部が隠れます。モノラルでは左右が足し合わされるので、位相がずれた部分は本当に打ち消し合います。クラブのシステム、スマートフォン、多くのサブウーファーは低域をモノラルで鳴らします。

EQでベースの位相は変わりますか?

変わります。ハイパス(ローカット)や強めのローシェルフは、その周波数付近で位相を回転させます。キックやベースの150Hz以下のEQを変えたら、位相をもう一度確認してください。

プラグインでキックとベースの位相を自動で直せますか?

直せます。ステップ2〜5は測定できるからです。Kick & Bass Auto Mixはタイミングを動かさずにキックごとの回転を見つけ、130Hz以下にサイドチェインをかけ、120Hz以下のベースをモノラルにします。そのあとも聴いて判断するのは自分です。

// Kick & Bass Auto Mix

キックとベースの位相を拍ごとに補正

Kick & Bass Auto Mixは、タイミングを動かさずにキックごとの回転を見つけます。最後に決めるのは自分の耳です。

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Wagner Who

// 著者について

Wagner Who

2017年から制作を続ける電子音楽プロデューサー。音楽理論と和声を専門課程で学んだ。Progressive House、Peak Time Techno、High-Tech Minimalを制作し、プロデューサー向けのミックス用プラグインも開発している。

// 次に読む

キックとベースの位相をワンクリックで揃える:ずれた波形を回転させて位相を合わせる図 // 位相ズレ補正 キックとベースの位相をワンクリックで揃える キックとベースをワンクリックで自動ミックス。位相、音量、サイドチェインをループに合わせて設定 // Auto Mix キックとベースを自動でミックスする方法

Kick & Bass Auto Mix キックとベースの位相を拍ごとに補正

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Wagner Who

音楽プロデューサー/プラグイン開発者

Progressive House、Peak Time Techno、
High-Tech Minimalを制作。
プロデューサー向けのプラグインとレッスンも。

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